時は2月の中旬が過ぎようとしていた。



Tennis&St.Valentine





ホグワーツは雪が溶け、冷たい風が通る2月。
が目覚め、特待生たちはいつも通りに授業を受けていた。
そして、医務室では・・・・・・・




ガリガリガリガリガリガリ・・・・・・・・・・・




この音が響いていた。



授業が終わる鐘の音が聞こえてもこの音は鎮まらなかった。





〜〜」
達がのいる特別療養室にやってきた。
だが、返事はしない。
は黙々と課題をやっている。
「聞こえなかったのかな?」
「う〜ん・・・」
も不審に思い、


「「「!!」」」

再度声をかけるが返事をしない。


結局3人は、の課題が終わるまで何も言わないことにした。





「よし・・・・今日の課題・・・・終わった・・・」
羽ペンを机に置き、そう呟くと達も声をまた掛けた。
〜〜!!終わった?」()
「あっ、。来てたんだ・・・」
「2時間前にね。来た時も声かけたのに・・・」(
「ゴメンゴメン。今日中に終わらせなきゃいけないと思ったら、集中しちゃって・・・」
「でも、1日の課題だけでこんなにあるなんてね〜〜」(
が今日終わらせたプリントを見てそう言った。
「まあ、約1ヶ月分と考えればまだ少ないんじゃないかな・・・・」

4人がそう話していると、1匹の屋敷しもべがやってきた。
「ミス・・・・今日の課題、終わりました?」
「あっ、ジャコピー。今、終わったから先生方に届けて」
「了解しました」
ジャコピーは課題を持って医務室から出て行った。



、これから何するの?」
が問いかけてきて、はう〜んと悩みだした。
「リハビリかな・・・両腕は十分に動かせるようになったけど・・・
 まだ足が言うこと利かないから・・・」
そう言い、は机に手を置き、両腕に力を込め身体を立たるが、すぐベッドに横たわる。
その姿に3人は・・・・
「危なっかしいね・・・」(
「少し力入らなかったら、ベッドから落ちてるよ・・・」(
「こういうときこそ私たちを頼ってよね」(
そうに言う。
「あはは・・・ゴメンゴメン。今はこれで精一杯・・」
は苦笑いしながらも、3人に微笑む。


がベッドから起き上がろうとしたとき・・・


「なんだ、またベッドに倒れてんのかよ?」
不良口調に亜久津がやってきた。
「エヘヘ・・・これでも進歩したんだけど・・・」
亜久津はベッドに近づき、を軽々と起こしてくれた。
「ありがと」
「別に・・・」



あれから亜久津は時間がある限り、の所へ来ていた。
それは達、他の特待生たちも知っている。
だが、亜久津は意外には心を開こうとはしない。

「仁君。今日の授業、どうだった?」
はいつもと同じようにこの言葉から亜久津に問いかける。
「お前・・・“仁君”は止めろって言っただろ・・・」
「いいじゃない。私たちは『友達』になんだから」
「ったく・・・今日もつまんねーよ」
「そうなの、たち?」
たちにも話をふった。
「う〜ん・・・あっ、でもスネイプの授業は相変わらず嫌〜〜だったけど」()
「またグリフィンドールの点、下げられたし・・・」(
「でも、他の授業もいつもと同じって感じだった」(
「そっか・・・ねぇ、国光たちは?今日はまだ見てないけど・・・」
いつもなら彼女達とともにやってくる彼氏's達がいないのを、3人に問いかけてきた。



「今日から練習再開するんだって」()
「そうそう。英二なんて授業が終わると、とんで寮に戻っちゃうくらいに」(
「でも皆、久々にテニスできるっていう顔してたし・・・相当嬉しいんじゃないの?」(
「そうね・・・仁君はいかないの?」(
「ケッ・・・いかねーよ」(亜久津)
そう言い、亜久津は達に背を向けた。
「一度、顔を出してみたら?国光から聞いたけど・・・
 リョーマ君に負けてから全然やってないんでしょ?
 リョーマ君だけが強いってことないのよ。1度負けたくらいで何しょげてるの?
 もう一度、やってみたら?テニス・・・・」
「お前・・・・」
「なんなら、強引にも連れて行ってもらおうかな?」
「あ゛〜〜?何言ってんだ、てめーーー」
「ねっ、太一君?」
はドアの方に声をかけると、ひょこと太一が顔を出した。
「あれれ・・・ばれちゃったです・・・こんにちは」
「太一・・・テメー」
「亜久津先輩を迎えに来ましたです。一緒に行きましょう」
「ほら、せっかくの機会、逃さない!!私たちも一緒に行くから」
がそういうと、達も頷く。
「しゃーねーな・・・」
亜久津はそういうと、車椅子を取り出し、を軽々持ち上げ座らせた。
「お前はこれがなきゃ、動けねーだろ・・・行くぞ、太一」
「はいです!!」
2人は医務室から出て行った。


「それじゃ、行こっか?」
「「「ウン」」」
4人も後を追うように、テニスコートへと移動した。







一方、テニスコートでは・・・・・
久々にミニゲームを行っていた。

「よし、英二。いつも通りに行こう!」
「もち!!」

「迎え撃ってやるぜ!!なっ、侑士」
「せやな。わいらが負けへん」

秀一郎&英二ペアと岳人&侑士ペアのダブルス。



「おい、桃。今日こそ深司達を倒そうぜ」
「ああ、リョーマを泣かしてやるぜ」


「あーあ、もう燃えてるよ・・・」
「オレを泣かすんだ・・・やってみてよね、桃先輩」

アキラ&桃ペア、深司&リョーマのダブルスの試合をしていた。



さすがに3面しかないコートで24人は狭すぎる。
試合をしてないメンバーは素振り、壁打ちや試合のジャッジをしていた。


「遅くなってすみませんです。亜久津先輩、つれてきました」
太一がそう言い、亜久津を前に出す。
「すぐ、アップしろ。太一はリョーマと3ゲームのミニゲームをする」
桔平がそういうと「はいです!!」と答えた。
「亜久津、練習に参加するか?」
国光が問いかけると、
「つまんねーけど、あいつが行って来いっていったからよ〜」
「あいつ・・・?」
亜久津の言葉に国光は疑問に思い、問いかけると、亜久津は後ろを指差した。
見てみると、ゆっくりだが車椅子に乗ったがコートにやってきていた。

!!」
彼女を見つけたと同時に、国光は駆け寄っていった。
「お前は・・・無理してまで出てくるな」
「そう言われても・・・国光、最近過保護しすぎよ・・・
 たまには外に出たいもの」
「だが・・・・」
「大丈夫よ!」
は見上げながら国光に言う。
1つため息つき、国光はコートまで車椅子を押すと言い、移動し始めた。

「ねぇ、仁君。コートに来た?」
はさっそく亜久津が来たかと、問いかけた。
「ああ、さっきな・・・が言ったのか?」
「うん。“一度負けたくらいで何してるの?”ってね」
「そうか・・・」
「それで、国光にお願いしようと思って・・・」
「なんだ?」
「シングルスやって、コテンパンにしてやってくれない?仁君を・・・」
の言葉に、国光は立ち止まりと向き合った。
「どういうことだ?」
「仁君に教えてあげたい。強いのはリョーマ君だけじゃないってね・・・
 もしこれでまたテニスを始めるきっかけになればいいと思って・・・
 別に国光じゃなくてもいい。ここには景吾君や桔平君、全国区プレイヤーは
 ゴロゴロいるし・・・」
の語りに、沈黙が流れた。





「解った。その願い、受けよう・・・」
国光が、の願いを受け入れた。
「ありがとう・・・これで仁君がやる気出してくれればいいね」
「ああ」





コートにつくと、ダブルスの試合は行われていた。

「あっ、珍しい〜〜!!リョーマがダブルスしてる!!」
は即座にコートに駆け寄り、試合を見始める。
それに続き、もコートに駆け寄った。
「英二は秀一郎君とダブルスか・・・しかも相手は侑士君に岳人君」
「五分五分って感じだね・・・」
がそういうと、後ろから話しかけてきた人物1名。
「ゴールデンペアにあれほど食らいついてくるだけはあるよね。
 さすが氷帝のダブルス」
「周助!!」
「やぁ、。来たんだね」
「うん。あと・・・・」
は城の方指差しながら、「もね」と言った。
「なるほど・・・国光はまた過保護してるんだ・・・」
周助は2人の姿を見て、クスリと微笑んだ。



「あ〜〜〜、だにゃ〜〜」
「英二。行くのは試合を終わらせてからだ」
を見つけた途端、駆け寄ろうとする英二を止める秀一郎。
「チェ〜〜〜」
「英二、試合終わったら来ていいから」
の言葉にスイッチが入った。
「よーし。一気に終わらせよ」
その言葉にカチンと来た岳人。
「出来るものならやってみろ。くそくそ英二」
「挑発の乗るんやないって・・・岳人」




ダブルスの試合が終わり・・・・・・

「亜久津、コートに入れ」
国光はラケットを持ち、亜久津に言った。
その言葉に、全員が2人を見る。
「しゃーねーな」
亜久津はそういいながら、コートに入った。
「清純、コールを頼む」
「了解☆国光、本気でいくのかい?」
「ああ」
2人はコートに入りながらそう会話を交わす。


「ほんじゃ、行くよ。1セットマッチ、亜久津 トゥサーブ」
清純のコールとともに試合が始まった。
亜久津の鋭いサーブが放たれる。それを意とも簡単にリターンする国光。
そして熾烈なラリーが続く。

「へぇ〜、やるじゃねーの!!」
亜久津は挑発しながら、ラリーを続けていった。



「国光さん、本気ですね。あの亜久津に挑発されても冷静でいる」(長太郎)
「せやな・・・でも、なんで亜久津となん?」(侑士)
「そんなのわかんねーよ。でも、亜久津結構苦しそうだぜ?」(岳人)
「ああ、あいつは俺たちみたいに練習を積み重ねてないからな。
 体力的にも圧倒的に国光が上だ」(亮)
「でも、亜久津先輩はそれに向ってるです。亜久津先輩は負けません!!」(太一)
「だけど、実力の差で国光先輩が勝つよ・・・この試合」(リョーマ)


「ゲーム手塚 1−0 チェンジコート!」


「まずは国光さんがブレイクした・・・」(裕太)
「この試合・・・・もう勝敗が見えてます。データをとっても意味がありませんね」(はじめ)
「ああ、はじめの言うとおりだ」(貞治)
「もっとさ〜、粘れよな・・・」(深司)
「ぼやくなよ・・・でも国光さん、なんで亜久津と試合申し込んだんでしょうね?」(アキラ)
「国光のことだ。何かがあるんだろう・・・」(桔平)




それから試合は進んで行き、5−0で圧倒的に国光リードでラストゲームが始まった。




「おい、。この試合、仕組んだのお前だろう?」(景吾)
車椅子に座っているに景吾が試合を見ながら問いかけてきた。
「さすがね・・・そうよ、私が国光に頼んだの・・・」(
「でも、何で?」(英二)
「そうっすよ、こんなことしても何もないっすよ」(桃)
「いや、それはないと思うよ・・・・ねっ、ちゃん?」(周助)
周助の問いかけには頷く。


「国光にコテンパンに倒され、そこから這い上がる力をつけて欲しいの。
 仁君は、飽きっぽい性格だから・・・だから国光と試合して、また興味を
 持たせようと思った。で、結果があれ」
はそういい、試合を見る。
「亜久津君、いつもよりいい顔してる」(
「やっぱりテニスが一番ってことなんだね・・・」()
「それはここにいる男子全員じゃないの?」(
の言葉に周助はクスリと微笑む。

「こりゃ、一本取られたね・・」(秀一郎)
「確かにそうだね・・・俺達からテニスを取ったら何もないからね・・・」(隆)
「そうっすね・・・」(薫)
「ウスッ!」(崇弘)




「ゲームセット。ウォンバイ手塚!6−0」
試合が終わり、2人はネットを挟み会話し始めた。

「なかなかいい試合だった」
国光はそういいながら、手を差し出す。
「テニスも満更じゃねーな・・・」
そう言いながら国光の手を握った。
「明日からも練習に参加するか?少しはお前のストレス発散にもなるぞ」
「朝はしねーよ。だが午後は参加させてもらうぜ。
 今度は叩きのめす。覚悟しやがれ」
「ああ、望むところだ。いつでも来い」

亜久津はコートを出ると、のところへきた。
「お前だろ!?この試合仕組んだのは」
「ご名答!!で、どうだった?」
「少しは楽しめそうだ。今度こそあいつを倒す」
亜久津はそう言いながら、部室に入っていった。
「そう・・・」
それを見送る


「お疲れ様。いい試合だった」
はそう言いながら、国光にタオルを渡した。
「ああ。あいつもやる気を出してくれたからな・・・」
「これでまた心を開いてくれるといいね」
「そうだな・・・、もう医務室に戻るのか?」
「そうね・・・そろそろジャコピーも戻ってくるし・・・」
「少し待ってろ。一緒に戻ろう」
「うん」
国光はそういうと、即座に部室に入り、数分後には着替え終わり戻ってきた。

「行くぞ」
「うん」







そして、就寝時間を過ぎた頃・・・・・
「それじゃ、ジャコピー。よろしく」
「規則に反しますが・・・・解りました。ミス・
ジャコピーが指でパチンと鳴らすと、を車椅子ごと厨房に連れて行った。


「それじゃ、始めましょう」
ジャコピーを含め何匹かの屋敷しもべ、は夜な夜な何らかの作業を開始した。








2/14

は今日の課題を早々終わらせ、いつものようにジャコピーに届けてもらった。
「お届け完了しました。あと、あの手紙も・・・」
「ありがと。それじゃ皆が来るまでに準備しなきゃ」
「はい」
は車椅子を動かし、ジャコピーにセッティングを指示する。
「そう、そこにはそれを・・・」


時間は刻々と過ぎていき、PM3:00。
「ふぅ、何とか間に合ったわね」
「後は皆さんが来るだけですね。私はもう消えます」
そういうとジャコピーは部屋から出て行った。


ジャコピーが消えたと同時に、ドアを叩く音がした。
「はい、どうぞ」
の返事に特待生たちは部屋に入ってきた。
・・・・この手紙はどう・・・」
どういうことだ?と言おうとした国光。
だが、部屋の状態を見て唖然とし、何もいえなかった。
「うわ〜〜〜、甘い匂いvv」
ひのきが国光を押し寄せ、部屋に入るなりそういう。


「皆、きてくれてありがとっ。今日は感謝の気持ちを込めて、
 私からのプレゼント」
がそう言い、呪文を唱えると甘いケーキやお菓子がいっぱい出てきた。
「「「「「ケーキvv」」」」」
さすがに女の子達には好評である。
そして、嬉しがるものと、見た目甘そうなのを見て思わず口を押さえるものと分かれた。
「さっ、皆。食べて」
即座に、桃、アキラ、英二、リョーマ、岳人、ジロ、清純、、ひのき、太一、裕太、
杏、秀一郎、隆、薫、長太郎、崇弘、周助、、深司は好きなお菓子を取り、食していく。

「あれ、食べないの?」()
「俺、甘いの苦手やねん・・・」(侑士)
「でも、この前のケーキは食べてたじゃない」
「あれでも結構甘さを控えたから・・・」(桔平)
「さすがに、アレは無理だぜ・・・」(亮)
「おい、亮。そんな事言うんじゃねーよ・・・」(景吾)
「そういう、景吾君は?」
「うっ・・・」
の問い詰めに、何もいえない景吾。
・・・俺が甘いの苦手なのは知っているはずだが・・・」(国光)
「うん。だからぜ〜〜んぶ甘さをかなり抑えたのよ」
はにっこりと微笑みながらそう応えた。
その言葉に貞治が1つのガトーショコラを口にした。
「確かに甘さが抑えられていて、美味い」(貞治)
「でしょ!!」
「なら、僕も頂きます」(はじめ)
はじめを始め、甘いもの苦手隊(>m<)たちは少しずつ食していった。


は1つのケーキを手にし、亜久津のもとへ行った。
「はい、仁君」
「あ・ああ・・・」
ケーキを受け取り、亜久津はケーキを食した。
「モンブランか?」
「うん・・・太一君から聴いてね・・・」
そういうとはみんなの輪の中に入っていった。


さん、とても美味しいです」(杏)
「さすがちゃん。腕なまってないな」(ひのき)
「でも、いつ作ったの?」()
「昼って事はないよね・・・いつも私たちがいたし・・・」()
「まさか・・・・」(
「そう、そのまさか!!ちょっと規則違反だけどね・・・」()
クスクス微笑みあう、女集団。


「美味いッスね・・・さすが先輩」(桃)
「うんにゃ〜〜。でも、今日って確か〜〜」(英二)
「バレンタインっすよね・・・」(リョーマ)
「そういえば、そうだな・・・いつもと何かが違っていたからすっかり忘れてたよ」(隆)
「日本にいたときは散々だったからな・・・」(秀一郎)
「ふしゅ〜〜(思いだしたくもない)」(薫)
「特に周助と国光が凄かったからね」(貞治)
「そうだね・・・でも、このホグワーツではそんな事ないからいいよね」(周助)
「だいたい、チョコを渡すのは日本だけだしな・・・」(国光)


「美味いッスね。桔平さん」(アキラ)
「ああ。甘さも抑えていて誰でも食べれる」(桔平)
「そうですね・・・」(深司)
「1月に食べたケーキも美味かったけど、こっちも美味いですね」(裕太)
「ええ、桔平君たちが作ってくれたのもよかったですが、さすが女性ですね。
 作りようが違います」(はじめ)




「おや、あっくんはモンブラン?」(清純)
「まーな・・・おい、太一。お前、あいつに教えたんだってな?」(亜久津)
「はいです。先輩に頼まれて、教えちゃいました」




「せやけど・・手作りはええな〜〜」(侑士)
「ホントだぜ。しかもちゃんだしな」(岳人)
「料理上手ってことは知ってましたけど、これほどとは思いませんでした」(長太郎)
「ああ。甘いの苦手なヤツでも平気で食べれるのを作っちまうんだからな」(亮)
「スッゴイよね、ちゃん!!」(ジロ)
「ああ。そうだな・・・なぁ、樺地?」(景吾)
「ウスッ!!(美味しいです)」(崇弘)



こうして、バレンタインは過ぎていった。




おまけ
実はホグワーツ内では、男性が好きな女性にカードや花束などを贈るならわしがある。
それを知らない特待生30人であった。

第21話へ行く

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