なんで今更・・・・・



4th Game 〜Orange's Memory〜




〜リョーマside〜

オレがまだ5歳のときに、アイツは親父と一緒に来た。

『リョーマ。今日からお前の兄貴になる越前リョーガだ、仲良くしろよ』
『ヨロシクな。チビスケ!』
オレの帽子を取って頭をぐしゃぐしゃにする乱暴なアイツ・・・
それがオレとリョーガの出会いだった。


「親父のことだから成り行きで引き取ったって思ってた・・・のに・・・」


親父とテニスしてても、オレは打てずに良く転んで・・・
『なんだ、リョーマ。もっとボール見ろ!よし、次はリョーガ!』
アイツはオレよりテニスが上手かった。
オレが1人でオレンジの木に居た時だって・・・・


『お〜〜〜い、チビスケ〜〜〜〜!!』
オレがせっかく登ったオレンジの木にボールをあて、狙ってたオレンジを奪い取ったり・・・
『返せ、オレのオレンジ!!』
『お前の?名前でも書いてんのかよ・・・』
そういい、オレンジを皮ごと被りつくあの姿・・・
『ああ〜〜〜〜〜!!』
返して欲しさにあいつに飛び交ったけど、敵わなかった。
そして、海に飛び込みあいつは逃げて行く。
『返せ〜〜〜〜!!オレのオレンジ〜〜〜〜!!』
『まだまだだぜ、チビスケ!!』



オレと試合した時だって・・・
『あ〜、やめた!!』
途中で止めたりしてた。
『なんで・・・まだ終ってないじゃん!』
『だって、チビスケ弱えーんだもん。つまんねーよ』
『つまんなくないよ、最後までやろーよ』
『最後までやってもおんなじだよ、時間のムダムダ!
 せめて1ゲームくらい俺に勝てるようになってから、出直して来い!』
そういい、オレの頭を軽く小突きオレンジを差し出し
『まだまだだぜ!』
というアイツ・・・



でも、オレが一度1ゲーム取った翌日に、アイツは居なくなった。
親父にも母さんにも聞いたけど、行き先は誰も解らなかった。
だけど、あの後・・・・親父が・・・


『まぁ、あいつはあいつなりに生きてくだろ・・・お前の兄貴なんだしよ・・』


そして、半分血が繋がってることも幼いオレに話してた・・・・
だけど、こんな風に再会するなんてね・・・思いもしなかった・・・・





〜リョーガside〜

チビスケを見つけたのは、八百長試合をする相手を探す時に出されたビデオの中だった。
ってか、アイツの試合見るまですっかり忘れてた・・・
南次郎さんに引き取られてから、アイツをいっつもからかってたっけ・・・
あの頃はもっと可愛げがあったのによ〜〜。


こう、オレンジを手にしてると思い出すぜ・・・あの人の言葉・・・

『テニスって言うのはな、でっけー世界がみれるでっけー夢なんだ・・・』
そう言いながら、オレンジをボールで落としていた。
『リョーガ、お前もでっけー夢見つけろよ』



夕食会が終って、プールサイドにいるチビスケを見つけてオレンジを投げつけた。
生意気になりやがって・・・
俺と試合出来ないって知ったら、呆然としやがって・・・
コートに1人。壁打ちしてると、観客席から声が掛かった。


「世の中を裏側から見る・・・か・・・」
目線をあげると、青学の部長さんが立っていた。
「そろそろ、それも見飽きたんじゃないのか・・・」
「こいつは驚きだ。立ち聞きなんて、優等生ぶったアンタがすることじゃないぜ・・・青学の部長さんよ〜」
「本当は正々堂々、弟とプレイしたいんじゃないのか?」
そんなやつの言葉に、鼻で笑い、
「おまけに詮索好きとはいただけませ〜ん」
指を立て、そう言うとアイツはじっと俺を見ている。
「そろそろおやすみなさいのお時間よ、明日はお互いに忙しくなりそうじゃねーか・・・
 アンタもくだらん気を使わず、寝ちまうこったな・・・」

タオルを肩に掛け、ラケットとオレンジを持ち去ろうとする俺にアイツはずっと見ていた。


「ああ、そうそう・・・お前等の連れ・・・お前等の試合行動によってはあぶねーかもな・・・」
ちょっと警告がてら言ってみたが、無表情すぎるのか・・・無反応だったな。





汗を流し、おっさんのところにいくとやっぱり連れの4人が部屋に居た。
青学の部長さんが、断ったからこいつ等に頼み込むつもりなんだろうな・・・
けど、あの眼鏡の女が断るといったら・・・表情変えやがって・・・



「無事に帰りたかったら、言うこと聞いた方がいいぜ・・・」
俺からもそう言うと、髪が少し跳ねた女が声を荒げてきた。




「なによ・・・アンタ、それでもリョーマのお兄さんなわけ!!最低・・・」




んあ?チビスケのことを名前で呼んでる・・・はは〜ん・・・
俺はそいつに歩み寄り、確信を聞いてみた。
「なんだ?チビスケの女かよ・・・威勢いいじゃねーの・・・」
ちょっとからかってみたら、そいつは俺をキッと睨んできやがった。
「悪あがきはやめておけよ・・・怪我するぜ・・・」



そして、オレの背中越しに倒れる音がした。
ほーらみろ・・・おっさんたちを怒らしたら女でもこーなるってよ・・・
だから俺は警告したんだぜ?


「なっ、言ったろ・・・怪我したくなきゃ、大人しく言うこと聞けって・・・」
じゃないと、チビスケたち同様・・・マジで帰れなくなるぜ・・・